立てよ薬剤師。そして…

本日は世界薬剤師デー、そして「立てよ薬剤師運動」ということで、前回に引き続き今回も一筆書かせていただきます。

今更になりますが、簡易的に自己紹介させていただきます。

日々つらつらと思考をTwitterで垂れ流して、たまにバズったりしつつ、フォロワーが増えに増えて余計なことを呟けなくなってきたNOCHIKAと言います。業務の機械化、オートメーション化を推奨する立場で、普段はPHPやjavascript、MySQLなどで遊んでいる調剤薬局薬剤師です。

今回もいつものblog記事のように、今現在、論文評価データーベースや、処方評価データーベースなんか作っていたりもしますので、何かしらシステム作って「こうやって一緒に勉強していきましょう」とでも言うつもりでした。

が、今回は自分らしからぬことを書こうと急遽2日前から筆を進めていました。

というのも、先の大地震、北海道胆振東部地震のボランティアに行ってきました。

安平町災害ボランティアセンターの入り口

今回のテーマは「気付き」で書かせていただこうと思います。

他の方々のように、綺麗で整ったblogではありませんが、最後まで読んでいただければ幸いです。

皆さんもご存知の通り、北海道胆振東部地震では特に厚真町近辺が震度7の直下型地震により多くの被害に見舞われました。

後にブラックアウトと呼ばれる全道的な停電により、胆振東部、厚真町近辺のむかわ町や安平町だけではなく、遥か東方の十勝や北部の稚内でもライフラインに影響が出たことは皆さんがニュースで知る通りかと思います。

今回は安平町のボランティアに行ったわけですが、この地区は母の出身地であり、今は亡き祖父母の自宅も残っているため、悪く言えば懐かしの地元を見たいが故の興味本位でのボランティアへの参加でした。

本心では発生直後に向かいたかったのですが、所属店舗での業務に追われ、地震発生から2週間経った9/23(日)に現地へ向かうこととなった次第です。

安平町のボランティアについて知ったのは、地震発生後すぐでしたが、基本的に災害直後にはDMAT(災害派遣医療チーム)による活動が行われます(DMATには薬剤師も含まれますが、あくまで業務調整員としての参加です)。

さすがに二週間が経ったこのときには既にDMATは撤収しており、個人での看護師と医師による少数での看護対応の募集があるのみでした。そして、そこに薬剤師の文字はありませんでした。

薬剤師として求められていなくても、自分に何かできることはないだろうか。何かしら自分が役に立てればと思っていたところ、現地のチームがWEB上でボランティアの受付をし、情報をリアルタイムで更新していましたので、住宅清掃の業務を申し込みました。

実はこれは私にとって初めてのボランティア体験でした。靴やビニール袋、軍手などを購入し、いざ向かったわけですが、実際には物資は溢れている状況でした。物資提供が最も重要になるのは、ライフラインや情報が途絶されている2,3日目~7日目なのでしょう。

車で数時間。安平町までの道路は思っていたよりも普通で、所々2,3cm程度の段差になっている場所はありましたが、既にアスファルトで補修されていました。

千歳から安平まではこんな道が続きます。

数時間の運転で現地に到着し、慣れない調子で受付を済ませ、体に名前と居住地を記載したシールを貼り、意外とボランティアの人数が多く業務の振り分けが追いついていないようでしたので椅子に座って待っていました。

元々は住宅清掃で登録していた私も、やれることからやろうと土嚢の準備から始まり、最終的にはボランティアニーズの訪問聞き取り調査を行うことになり、急遽指示されたこの聞き取り調査ですが、これが運命の転機でした。

私は車で来ていましたので、運転をしつつ聞き取り調査をするということになり、たまたま隣に経っていた男性とパートナーとなって、遠浅地区の聞き取り調査を行うことになりました。

(遠浅地区とはこのような場所です。驚くほど何もありません。)

地図にも載っていない私道を、水路に落ちないように時速5km程度で進んでいくのです。

時には道なき道を歩き進んで、住宅へ訪問しました。

この辺り住宅は耐震基準を満たしていても、昔ながらのコンクリートブロックで作られた納屋などが多く、それら石造りの建物は概ね倒壊または破損していました。

安平町は冬場は-20℃を下回ることも多く、大抵の家庭には煙突付きストーブがあります。これをガンガン焚いて極寒の冬を凌ぐわけですが、この煙突が地震前日の台風で折れた家屋が多く見受けられました。防風林も無い地域ですので、木が根こそぎ折れていたり、二階が吹き飛んだ家もありました。

完全に崩壊した塀

地盤沈下によって浮き上がったマンホール

(マンホールが元の地面の高さで、実際には地面が30cmほど下がっています)

今回の業務はボランティアニーズの聞き取り調査でしたので、片付けてほしいものは無いか、困っていることは無いか、相談したいことは無いかなどを聞き取るのが主な仕事です。

自分が薬剤師であることも活用し、健康状態や薬で困っていることは無いか、病院には行けているかなども、ボランティアに支障を来さない程度に聞き取りを行いました(健康状態の聞き取りの可否については本部リーダーに事前に許可を取っています)。

※災害ボランティアでの自己判断での行動は非常に危険です。指示された業務のみを行い、それ以外の行動を取る場合は必ず本部の許可を得てからにしなければなりません。

震災から二週間経っていることもあって意外と病院へのアクセスは問題なく、各々がなんとか通って行けているようでした。そしてこの辺りは高齢者が非常に多いのですが、意思疎通や認知度、会話なども問題なくしっかりした方が多かった印象があります。

農業や酪農に親しんだ方ならではなのか、「自分のことは自分で行う」という意識が非常に高かったように思います。誰もが被災者であり、「人にモノを頼む」というのは非常に難しい中で、ニーズを引き出すのは技術の要ることです。が、意外とスムーズに会話が行えたのは、日々の業務があったからだと今は確信しています。

この時思ったのは、薬剤師の「会話から情報を引き出す能力」、そして「情報を簡潔にまとめて記す能力」というのは、これは他の追随を許さないほどに卓越したものであるということです。

会話の長い方、なかなか本心を言えない方。様々な方が居る中で「察して気づく」という、ある意味極めて日本人的な能力を最大限に用いることのできる職人は、これは薬剤師において他に無いのではないでしょうか。

処方箋という断片的で限られた情報のみを頼りに、患者さんから必要な情報を最低限の時間で的確に収集して記録するという能力は、我々が日頃当たり前と思っているこの行為は、社会から確実に必要とされている能力でした。

世の中には様々な秀才的な、天才的な知能を持った人達が存在します。

SNSなどで有名な薬剤師の方々にも、自分では決して追いつくことのできないような方々が居ます。

知は財産です。

それらを次の世代に紡ぐためにデータベース構築を、今こそモノの重要性をと業務の効率化や機械化を、と学んできた自分が、まさか一番原始的な方法に心動かされるとは思いませんでした。

これらは、日々を当たり前と考えて、そこに立ったままでは気づけなかったことです。

自らの足で駆けつけ、声を上げられない人達に寄り添わなければ決してわからなかったことです。

ヒーローは遅れてやってくる。今からでも何ら遅くはない。

立ち上がって、そして歩き出せばいい。

助けを必要とする人の下へ、歩を進めればいい。

勿論、法律や社会は「薬剤師」を欲しています。

しかし果たして、患者さんは「薬剤師の先生」を望んでいるのでしょうか。

患者さんが必要としているのは「薬剤師」でも「先生」でもなく、「一人の人間としてのあなた」かもしれません。

特に若い学生の方や新人、2,3年目の薬剤師の方々は、社会から向けられる目に敏感になることもあると思います。

紆余曲折を経て薬剤師という仕事に疑問を持ったとしても、決して孤独ではありません。

情熱と、執念と、夢を持って日々を創り出している仲間が居ます。

職業というのは生き方の一つの形でしかありません。

ただひたすらに、一人の人間として何ができるかを見つめていけばよいだけです。

私にはプログミングへの、医療への、薬への好奇心があった。

そういった生き方をしている。それだけのことです。

これを見ているあなたはどういった生き方をするのでしょうか。

私がblogを続ける理由。それは、無力と思い込み心折れかけたあの時の自分に見て欲しいからです。

悲観することはありません。人生は無限大です。

立てよ薬剤師。そして歩き出せ。

最後は前回と同じ言葉で〆させていただきます。

「転んだ人を笑うな。彼らは歩こうとしたのだ。」

米倉誠一郎(経営学者)

薬剤師 NOCHIKA

コメント

  1. […] ■立てよ薬剤師。そして… 【薬剤師のプログミング備忘録】NOCHIKA先生 →テーマ:災害支援で感じた”会話から情報を引き出す能力”と”情報を簡潔にまとめて記す能力” […]

  2. りちお より:

    はじめまして。
    ハッシュタグ #立てよ薬剤師 から来ました。
    (私は薬剤師さんではないのですが…)
    まずはじめに…北海道胆振東部地震のボランティア、お疲れさまでした。活動内容を教えていただき、ありがとうございます。

    その中で感じられたという「察する力」、これは本当に、薬剤師さんは長けておられる方が多いと思います。
    よく観察しておられたり、また患者にすれば「そこまで考えてもらっていたとは…」ということへの気配りもしてくださっていて、一朝一夕では身につかない「職能」だなぁと…
    …と、薬剤師さんにはそれらを口にされない奥ゆかしい方が多いので、こうしたブログやツイートなどで、その思いに触れることで気づいたりすることもあって…

    ずっと胸に刻んでおきたいお話をありがとうございました。